熱い風が、何処からともなく吹き寄せる。

ある者は額の汗を拭い、またある者は田畑を耕す手を休め。

熱い風が、「それ」と共にやって来る。

川岸に佇む者たちが、「それ」に気付いて声を上げた。

その瞬間───


───熱い風が、牙をむく。




Queen Rose




豊かな土地は荒らされ、
壮麗な宮は崩れ落ちる。

残った小さな命さえ、
全てを風が奪い尽くす。

熱い風が過ぎた時───


少女は、 一人で佇んでいた。


***


その出会いは、あまりにも突然で。


「お前らなら来年も案内してやるぜ」
がんばりな、という言葉と共に案内人が部屋を出て行き、連れられてきた男たちは戸惑いながらも席に着く。

「…あれ?」
「どうしたゴン?」
「…誰かの荷物が…」

その瞬間、ゴツン!!という大きな鈍い音がテーブルの下から響き…
「あたた…それ、あたしのです…」

一人の少女が、机の下から涙目で顔を出した。


「それで、何故君はそんな所に?」
「それが…」

彼女曰わく、「物を落としてしまい拾っていたところ途中で人が入ってきて、
迷っているうちに荷物に気付かれ慌ててしまい頭をぶつけた」とのこと。

「驚かせてすみません…」
「別に大丈夫だよ!ところでおねーさん、名前は?」
、です」
「オレはゴン!よろしくね、さん!」
「私はクラピカだ。よろしく」
「オレはレオリオ。よろしくな!」
順に自己紹介をすると、固かった少女の表情が少しずつ和らいでいく。
「よろしくお願いします!」

全員が席に着き、ゴンとがフォークを手にステーキを頬張る中、クラピカが口を開いた。
「3年に一人」
ルーキーが合格する確率だと彼は語る。
精神をやられ、二度と試験を受けられない者もざららしい、と。
「でもさ、何でみんなはそんな大変な目にあってまでハンターになりたいのかなぁ」
「そうですよね。何の意味があって…」
「お前ら、本当に何も知らねーでテスト受けに来たのか!?」
その言葉に、思わず固まるゴンと

「「ハンターはこの世で最も(儲ける・気高い)仕事(なんだぜ!!・なのだよ!!)」」

数秒の間。
ええかっこしィめ、だとか金の亡者が、という言葉はあえて聞かなかったことにしよう、とは溜め息を吐いた。


***


…まだ、下に着かないのかな?


延々と語られているゴンを横目に、少女は次々と肉を頬張る。

「どうだゴン、!!」
「2人はどっちのハンターを目指すんだ!?」
「どっちって言われてもなぁ〜」
「ごちそうさまでした。…で、何の話でしたっけ?」


その時、表示が地下100階の到着を告げ。
「話の続きは後だ!!」
全員が立ち上がり、ドアが開いた。


「───ッッ!!」

人数の多さに、少女は人知れず体を強ばらせる。
震える手で思わず触れた物を掴むと、訝しげなクラピカの声。
「どうした、?」
「ぅ、ぁ…ごめん、なさい…何でもないです」
それでもなお掴んでいる袖を離そうとしない少女に、クラピカは苦笑して手を差し伸べる。
「人混みでは離れやすい。こちらの方がいいだろう?」

その言葉に、は迷った末にゆっくりと彼の手をとり…ふ、と笑みを浮かべた青年に、小さく「ありがとう」と呟く。


運命の歯車が、少しずつ動き出した───