「12月4日…仁王の誕生日、と…」
日記とスケジュール帳を見比べつつ、予定を書き込んでいく。




   05




私が今開いている日記とスケジュール帳。
どちらもこの病室にあったものだ。
日記はベッド脇の棚の中、スケジュール帳は鞄の中。
…不思議なことに、二つとも私が実際に置いているのと同じ場所にあった。
うーん。夢にも現実が反映されてるんだろうか。


ただし、だ。
書いている内容はまったく異なる。


それこそ、たった今私が見ていたページ…12月4日は、
仁王の誕生日パーティーを部室でやったと書いてある。

赤也がはしゃぎすぎてジュースを零し、三重のお説教をくらったこと(神の子、皇帝、参謀…うわ、怖い)
ケーキはブン太の手作りだったこと
柳生とジャッカルが選んだプレゼントが、仁王にとても好評だったこと…などなど。
(ちなみに、もう少しで幸村の誕生日らしい。この間赤也がプレゼントの相談に来た)


…ますますわからなくなってくる。
これが現実なのか、それともあっちが現実なのか。


「んー…」
「お邪魔だったか?」
「…びっくりした。ドア開けっ放し…あれ、」


…どこかで言った気がする。これとまったく同じ言葉を。


「…どうした?」
「なんでもない。ちょっとデジャブ…」
そう言って、ドアの所に立ち尽くす柳に椅子を勧める。
ありがとう、と言ってそれに座る彼は、いつもの勉強道具を持っていない。
不思議そうな顔をしている私に気付いたのか、柳はふっと表情を緩めた。

「今日は幸村の誕生日の相談だ」
「あぁ、幸村の…そういえば、赤也が相談に来たっけ」
「赤也が?」
「うん。プレゼントの買出し、赤也になったんでしょ?
"ぶちょーが喜びそうなものって何スかねぇ…"とかって言ってた」
「ほう。赤也のことだから俺に聞きに来るかと思っていたが…予想外だな」
「"柳さんに聞くとヒントしかくれないんスよー!!"だそうです」

的確な「これ」っていう答えが欲しかったみたい。


「それで、は何と言ったんだ?」
「赤也が必死で考えて選んだものなら何でも喜ぶと思うよ、って」

(だって、幸村が喜びそうなものとかわからないもの!!)

心の中で叫ぶと、柳が笑っている。
「な、何?」
「ふっ…それを聞いて、赤也は不満そうではなかったか?」
「うん、すごく。何でわかるの?」
「お前の誕生日プレゼントを選ぶ時、俺が言ったことと全く同じだからだ」
実際お前は喜んだしな、間違ってはいないだろう?という柳の視線を辿ると、
ずっと気になっていた可愛い小物入れ。
「…そっか、赤也が」


…"私"のことだから喜んだとは思うけど、後で赤也を褒め倒してやらなきゃ。





「それで、ケーキはブン太?」
「あぁ。料理は持ち寄りにする」
「う、ごめん。私も入院してなかったらなぁ…」
「いつもはが作ってくれていただろう、気にするな。」
(そんなことしてたの、私。グッジョブ)
「こんなところだな。では、またな」
うん、と頷きかけて、慌てて彼を呼び止める。
「あ、柳!!」
「どうした?」
「あのね、」


呼び止めておいてなんだけど。
これは、言ってもいいものだろうか。


言いかけて止まった私を不思議に思ったのか、柳は数歩戻って私の顔を覗き込む。
「何かあったのか?」
「え、えっと…



柳は、今生きているのが夢か現実か…わからなくなったことって、ある?」





(君たちだけが、知ってる私)