の…容態が、悪化した」
幸村が俺らにそう告げたのは、幸村の誕生日を明日に控えた日のことだった。




   07




「っ、それで…は」
「集中治療室に。しばらくは面会出来ないかもしれない」
表情を暗く沈ませて、ブン太に答える幸村。
それを聞いて、引きつった顔の赤也がずるずるとしゃがみ込む。
「…せんぱい…っ」

仕方ねぇよな。こいつ、一番に懐いてたし。
丸井も、昨日に会いに行くとか言ってたしよ…

「昨日、フツーにケーキ食ってたんだぜ?赤也と取り合い、して…っ」
「いつもみたく、馬鹿やってたのに…!」
堪えきれなくなったのか、赤也が鼻をすする。




「…ほら。練習するよ」



突然、様子を見ていた幸村が、すっと立ち上がった。


「…っ!?」


誰もが、正気を疑うような目で奴を見る。もちろん俺もだ。
そして真田が口を開く。
「…お前なら、真っ先に会いに行くことを考えるかと思ったのだが」
「そりゃあ、考えなかったわけじゃないよ」

平然と答える幸村に、俺もつい声を上げる。

「じゃあ、何でだ」
「…ジャッカル。俺は、いや…俺たちは、に何て約束した?」
「…え…?」



「俺たちは負けない。無敗で、の帰りを待つ…そう約束しただろ」



そう言って、幸村は仲間を見渡す。
「まさか、それを破るつもりじゃないよね」
「…」
「練習は通常通り行う。
マネージャーがいないだけで練習を中止するなんて、他の学校からなめられるからね」
ただ、と幸村は続ける。

「練習が終わった後、余力のある奴だけでランニングを行う。行き先は、」



病院だ。




「幸村君…」
「…やるぜよ、柳生」
「ええ」

柳生が、
仁王が、

「柳さん、相手お願いするっス」
「あぁ、わかった」

赤也が、
柳が、

「真田。口を出すとは、いい度胸だね」
「む…」

幸村と、真田が。


みんなが、立ち上がる。



「ジャッカル」
「…ああ。やろうぜ」



俺たちは負けない。
だから、お前も負けるな…





(君に捧ぐ勝利を)