ふわふわと。
漂う感覚。

(あれ、私…?)

と話してて、苦しくなって。
それで…どうしたんだっけ…?




   08




っ、っ!!』
『お姉ちゃん!』

両親、妹の声がする。


(どこ?どこにいるの?)


目を開いているはずが、周りは真っ暗で何も見えない。


(嫌だ…助けて…っ)





さん…』
!!』
せんぱい…っ』


(…え…?)


聞こえるはずのない、声。
それと同時に、その声のする方向から光が差した。


(みんな…?)


柳生の声。ジャッカルと、赤也の声も。
それに誘われるように、光の方へと踏み出す。
一歩、一歩と近付くうちに、声が増えた。


!』
っ!!』

『頑張れ、…!!』

ブン太と柳。…そして、幸村。
そう認識したところで、私は無意識のうちに走り出していた。
早く、早く、みんなの所へ…!!


(あ、)


そこで、唐突に何かを理解した。





…ここを踏み越えたら、きっともう戻れないんだ。
両親、妹…それに、
みんなに会うことは、もう出来ない…


思わず、後ろを振り返る。
走ってきた道は、相変わらず真っ暗だったけれど。

遠くに、家族と友人の顔が見えた、気がした。

(お父さん、お母さん…)
何もしてあげられなくてごめん。
それに…たくさん心配かけちゃって、ごめんね。
(亜衣、)
いっぱい泣かせて、ごめん。
…っ)
お見舞い、すごくすごく嬉しかったよ。
またと一緒に、ファミレスでお喋りしたかったなぁ。
ごめん…ありがとう。




そう心の中で呟いて、一歩踏み出す。
涙が零れた。

もう、後戻りは出来ない。
前に進むしかないんだ。


前に、前に…





どこかで、無機質な機械音と、
泣き叫ぶ声が聞こえた、気がした。




(さようなら、私の愛した世界)