何度目を閉じても

何度目を覚ましても

そこにあるのはいつもと同じ病院の白い壁とカーテン、そして

いつもと違う、人の姿。




   10




「…っ、先輩の、阿呆…っ!!」
ぼろぼろと涙を流す赤也

「心配、させるな…たわけが」
心底ほっとしたような顔の真田


「…本当に、よかったです」
「ヒヤヒヤさせんなよな、ったく」
「おーそうじゃ、ブンブンはあまりに心配で泣いとったぞ」
「はぁ!?」
「大丈夫か、?」



何度目かに意識を浮上させた時、
立海大附属テニス部の面々が、私を覗き込んでいた。



「みんな、騒ぎすぎだよ。

、気分はどうだい?」



幸村が気遣うような顔で問いかけてきても
私は、言葉を返すことが出来なかった。




両親や妹、そして
私が選ぶことの出来なかった世界のみんなは、どうしているんだろう。
そして、あちらの世界の私は…一体、どうなったんだろうか。




…?」

柳にハンカチを差し出され、ようやく自分の涙に気が付く。
どうして、なんて考えなくても、理由なんてとっくにわかっていた。






もう、家族や親友には会えないのだ。


本当の私、あちらの世界の私を知る人はいない。


知らない場所に、身一つで放り込まれたようなもの。




辛さ、不安、悲しみ…
渦巻く様々な感情を隠しておくのは、限界だった。




助けを求めたくて、縋る手を求めたけれど。

誰に、

何に助けを求めれば良いのか、私にはわからなくて。




「…ごめん、今日は…」


今日は、なんていう言葉で誤魔化したけれど


「帰って、くれる?」


それは、小さな拒絶だった。





(近づけたら、傷つけてしまいそうで)