お医者さんの言葉に
私はただ、頷くことしか出来なかった。
15
「さん、検査の時間ですよ」
「あ、はい。今行きます」
看護師さんに呼ばれ、私は上着を羽織って立ち上がる。
週に一回の定期検査。
そろそろ血液検査やらなにやらの結果が出るらしい。
("私"の血液検査なんだけど…いいのかな…?)
不安になりつつ、診察室へ。
説明を聞く限り、"私"の病気は私と同じのようだった。
ただし"私"の場合、発見が早かったことと薬のおかげで容体が悪化しなかったらしい。
それはあくまでも、今までの話だけれど。
「それでね、さん」
主治医の先生が、真剣な瞳で言う。
「今は症状が薬で抑えられてるんだけど、いつかまた容体が悪くなるかもしれない。
そのためにやっぱりしておいた方がいいと思うんだ、」
手術。
容体が悪化した時…それはすなわち、私の死を意味するんだろう。
元の世界で体験した、死
私が「死んだ」後、周りの人たちが今どうしているのか…私には知る術がないけれども。
(…もう、悲しませたくないんだ、)
選択肢なんて、ある訳がない。
生きるか死ぬか、そんなのは選択肢なんてものじゃないんだ。
死ぬことは…選ばないんだもの。
「…わかりました。お願いします」
***
「やあ。調子はどうだい?」
ノックの音と共に顔を出した幸村に、笑顔で答える。
「ん、まあまあかな」
「そうか、」
当たり障りのない返答。…の、はずだったけれど。
「じゃあ聞き方を変えるよ。何かあったね?」
彼には何もかもお見通し、なんだろうか。
「…あはは。幸村はすごいね」
隠し事なんて出来そうにない。
「…手術をね。することにしたの」
(ああどうか、そんなに泣きそうな顔をしないで)