もう迷わない。
そう、心に決めて。




   18




再び流れる景色。
新緑の中を車に揺られながら、私はまた彼らのことを考えていた。




早く、早く、会いたい。
一体みんなはどんな反応をするんだろうか。

(退院するって、幸村にしか言ってないし)

しかも、いつ退院するかということは幸村にさえも伝えていない。
…まあ確かに、退院の日取りは突然決まったのだけれども。

(驚くかな?それとも、喜んでくれる?)

…どんな表情だっていいんだ。
早く…みんなに会いたい。







無事に学校に着き、周りを見渡す。(…うわあ、広い)
目的の場所へ自力でたどり着けるのだろうかと、一気に不安になってしまった。
…仕方ない。誰かに場所を聞こうか。

誰かいないだろうか、と再び辺りを見渡しかけ…何かの音が、耳に届いた。


(この音、は…)




「ジャッカル先輩、もう一球!」
「いくぜ…ファイヤー!!」
「きっちり返すぜ…  参謀が」
「丸井…後で覚えていろ」



心地よい、テニスボールの音。



「疾きこと風の如し!!」
「レーザービーム! …プリッ」
「仁王君、それは私の技です!」
「俺もレーザービームやってみようかな」
「ゆ、幸村君まで!!」



コートを駆け回る、その姿。



(…なんて、楽しそうなんだろう)

"私"が見ていたであろう、その景色。
人知れず消えたその存在を思い出して、また少し心が痛んだけれど。

(…それでも、私は)

それでも私は、ここで生きていくんだ。
立海大附属高3年の、として。




「…?」
「ちょ、ジャッカルせんぱ、」
!?」「!!」

行き交っていたボールの動きが、止まった。
バタバタと、みんなが駆け寄ってくる。


…っ、退院してたのかい?」
「つーか本当に先輩っスか!?夢とかじゃ…イテっ」
「ほう、痛いっちゅーことは夢じゃなか」


どの顔にも、笑顔が浮かんでいて。





「…ただいま!!」





(私も、精一杯の笑顔でそれに応えよう)