「ここの式は、これに代入して…」

やばい。

「これはこの文のこの言葉を示しているので…」

やばい。

「来週この範囲の小テストするぞー」

、ピンチ再び。




   23




、大丈夫…?」
「死ぬ…」


ぐったりと机に伏せる私を見て苦笑する
信じられない。何なんだ、この立海の授業レベルの高さ!
倒れこみたくもなりますよまったく。



「物理が来週小テストでー、数学は公式覚えて課題やるでしょー、…」

"私"に代わってここで過ごす覚悟を決めたとはいえ、
こうも課題だのテストだのに追われては、その覚悟も揺らぐ。

(うう、うちの高校とはレベルが違いすぎる…!!)



「顔が死んでいるぞ、
「やーなーぎー…」

いつの間に入ってきたのか、柳がと並んで私を見ていて。

「当たり前じゃない…何がわからないのかわからないってこのことだよ…」

赤也が英語わからないっていうのはこんな感じなのかな、なんて呟いたら、
目の前の2人は揃ってふきだした。…なぜそこで笑うんだ。


「それで、私の勉強の出来なさを笑いに来たわけじゃないよね、柳」

わざわざうちのクラスに来るなんて、何か用事があるはずだ。
そう思って問うと、柳は教科書の間からプリントを取り出す。

「先程顧問に会ってな。今度の合宿の詳細が決まったらしい」
「合宿?」

そういえば、部活に復帰した日に赤也が言っていたような。

「来月の連休にやるって言ってたアレ?」
「ああ」
「氷帝とやるっていうアレ?」
「そのアレだ」

いちいち頷いてくれる柳の言葉に、喜んでいいのか悲しむべきなのか困ってしまった。


確かに、氷帝の人たちと会えるなんてとんでもない幸運である。
なにせ、この世界に来てから会ったキャラなんて立海だけだし。
けれども問題がひとつ。


「課題が…!!」

そう、課題に追われていること。
来月の連休―――所謂、黄金週間―――には、間違いなく課題が山積みになるはずだ。
勉強が出来ない出来ないと騒いでいるブン太や赤也だって、一応は授業を理解しているみたいだし。
つまり、本当にまずいのは私だけ、ということで…


「合宿期間中はきちんと勉強時間があるから心配するな」
「ほんと!?それって柳とか柳生とかに教えてもらえたりするの!?」
「俺は構わないぞ。柳生だって、頼めば教えてくれるだろうな」

その答えに、ようやく安堵して。


「合宿万歳!!」


わたしは、大きく万歳三唱をしたのでした。










***











私の万歳三唱にひとしきり笑った柳が退散してから、漸くプリントを手にした私。
合宿の詳細を目にして、私は一気に我に返る。

「…で、一体何が万歳だったんだろうね、私」


そうだ、こいつらテニス馬鹿だったんだ。
氷帝だって、実際見てはいないけれどもテニス馬鹿ばかりに違いない。
そうでなければこんなスケジュールを組むわけがないんだ。


「確実に勉強まで手が回らないじゃないあほおおおおおおお!」


雄叫びに驚いたがプリントを覗き込む。
そして私と同様に、呆れた表情で首を振った。

「1日中練習しておいて、夕飯食べてからも練習?勉強時間30分?就寝22時半?
、諦めなさい。どう考えても勉強させる気ないよ、あの連中」


課題は手伝ってあげるから、頑張っておいで。
の慰めがありがたい。…やっぱり、持つべきものは友だね…。





いろいろな不安(と、たくさんの課題)を抱えつつ、合宿は2週間後に迫って来ていた。






(迫る、期日)