「再来週からテストなんスよ…」
赤也の呟きに、私は呆れてため息を吐いた。
Jumpin' again! 〜お勉強しましょう
「他の教科はどうにかなるんスけど…英語だけが…」
延々と英語の愚痴を聞かされる。ええもうお腹いっぱいです。
「えーっと、赤也…?どこがわからないの?」
「…よく言う、どこがわからないのかもわからない状態で…」
…呆れるしかない。
しかし彼にとっては相当重要な問題のようで(赤点だったら3強からサラウンドで説教らしい)、
いつも元気な彼が椅子に座ってしょんぼりとしている。
…ああもう、可愛いな!
「それじゃあ、俺もう帰るんで…」
なんて言って、来た時と同じように落ち込んだ様子で帰っていく赤也。
仕方ない、おねーさんが一肌脱いであげようじゃないの!
次の日お見舞いに来てくれたのは柳生だった。
…正直彼で本当によかった。(さすがの私も3強に堂々と頼む勇気はない)
「ねえ柳生、高1の英語の教科書ってまだ持ってる?」
「ええ、持っていますが…どうかしましたか?」
「ちょっと借りたいんだ。再来週からテストなんでしょ?」
勘のいい柳生は、それで察したらしい。(ありがたい)
「わかりました。明日のお見舞いは…ジャッカル君ですね。
彼なら大丈夫でしょうし、明日持って来ます」
「ありがと柳生、助かるよ」
「では一緒にノートも持って来ましょうか?」
「うん、そうしてもらえると助かる。筆記用具とかはあるからいいよ」
他の部員には内緒にしてもらえるように約束し、柳生は帰っていった。
***
「よ、」
「こんにちはさん、持って来ましたよ」
部活帰りらしい彼らが来たのは、陽もやや落ちかけた頃のこと。
「ジャッカル久しぶり!と、柳生は昨日ぶり」
どうぞ、と差し出されたノートと教科書を受け取りつつ言うと、
ジャッカルが不思議そうにそれらを見る。
「高1英語?何に使うんだ?」
「テニス部の赤点エースにプレゼントを!」
ふざけて答えれば、ジャッカルは「すまねえな」と申し訳なさそうに言った。
…やっぱり、担当はジャッカルなんだろう。厳しくないからと赤也に頼まれてそうだ。
今日は水曜日。
遅くとも今週中にノートを渡せば、赤也も頑張れるだろう。
柳生に許可をもらって、私は教科書とノートにペンを走らせた。
***
「はぁっ、はぁっ…何スかせんぱい、急いで来いって…」
赤也に緊急メールを入れたのはさらにその次の日。
…かつてないほどに頑張った私を褒めてあげたい。というか誰か褒めて。
「赤也にプレゼントをあげようと思ってね。はいこれ」
「…ノート?」
受け取った赤也はそれをパラパラとめくり…目を輝かせた。
「これ、テスト範囲の!!」
「うん、要点ね。これをしっかり覚えれば赤点は取らないはずだよ」
「ありがとーございます!!ってせんぱい、これどうやって」
「内緒。さて赤也、私にここまでやらせたんだから赤点取っちゃ駄目だよ?それと、」
みんなには、内緒だよ?
囁くと、「ウィッス!」という元気な返事が返ってきた。
赤也のテストの結果は、また後で。
Jumpin' again!(さあ手を伸ばして、)(ほら、もう少し!)