どうしてこんなことするの、とあたしは尋ねた。
     仇だから、そう彼は淋しそうに微笑った。



          誓い



     軽やかにチャイムを鳴らし、彼はやって来た。
     久しぶりに見た姿に思わず抱きつき、眩い色のその髪に顔を埋めれば、彼は慌てたようにあたしの背中を叩く。
     どうしたのだろう、と顔を上げると、目の前には真っ赤になった彼の顔。
     「どしたの、クラピカ」
     「…無意識、か…?」
     何が、と聞いても彼は答えてくれず、益々赤くなるばかり。

     数ヶ月という期間でも、貴方はやっぱり変わらないのね…

     小さく呟きつつ彼を伴ってソファーへと落ち着く。
     途端に溢れる、もう暫く会っていない"受験仲間"の噂話。
     レオリオはもうじき大学に合格出来そうだとか、ゴンとキルアがまた暴れまわっているらしいとか、話し出せば止まらない。
     すっかり話してしまい話すことが無くなって、やっと訪れる沈黙。
     いつもは心地良い時間だが、
     あたしは、敢えてそれを破る。


     「ねぇクラピカ」
     「…何だ?」
     「…クラピカの髪って、凄く綺麗よね」
     さらり、と流れる髪を手に取れば、彼はくすぐったそうに目を細める。
     「クラピカの金色は眩しいよ」
     髪型は同じなのにこんなに違うものなのね、と付け加えると、貴方も同じ様にあたしの髪を取る。


     「…私は、の髪の色が好きだよ。何処までも吸い込まれそうになる」
     「あたしは嫌。闇みたいで…クラピカの方が太陽みたいで素敵じゃない」
     「闇ではない。こんなに光を集めているじゃないか」
     「…はは、お世辞でも嬉しい」
     そう言えば、貴方は「お世辞などではない!!」なんてムキになって、怒った様にあたしを抱き直し。
     愛しい彼の温もりが、更にあたしを包み込む。
     暫く心地よさに目を閉じていると、クラピカは後ろからあたしを覗き込んだようで。

     「
     「何?」
     「何か…私に言いたいことはないか…?」
     勿論たくさんあるわ、なんて言ってみれば、困ったような彼の顔。
     「…すまない」
     「何で謝るのよ」

     これはクラピカの人生だから、あたしが口出しする話じゃ無い。
     …だけど。

     ───どうしてこんなことをするの?
     ───…仲間の、仇だから…

     ならばせめて、無理はしないように。
     効果があるとは思えないけれど、「約束」と呟く。
     「無茶は、しないでね」
     「…善処しよう」
     「約束、してよ」
     震える声を知ってか知らずか、突然彼は「も」と言う。
     「何が?」
     「無茶をするな。私だって、が心配なのだよ」
     その言葉に、あたしは苦笑して答える。
     「クラピカが、無茶しないって約束するのなら」
     すると、彼は優しく微笑んで。

     「それなら、約束しよう」


     重なった唇は、泣きたくなるほど優しかった