「俺が付けたモノ以外は要らない」


付けられた跡は、愛された証。
刻まれた印は、所有の証。








   傷跡








「馬鹿ですか」
「いや、話聞く前にそれは酷いよ」

適切なタイミング、適切なツッコミ。
これで「確かに」なんて笑う彼は天然?
いえいえ、わざとです。

「で?」
「あぁ、えっとね」

説明を求められているのは、この両手両足に出来たアザの理由だ。

「左足はバイトの時にぶつけて、
右足はサークルの時にぶつけて、
両腕は窓から侵入した時に出来た」
「完璧に馬鹿ですね」

…うん。今度は何も言うまい。
確かに悪かったのは私なのだから。
「窓から侵入」なんて、私が単に家の鍵を忘れたからだし。

「足は特に今酷い状態なんだよねー。虫刺されとアザと…」
「…虫なんて滅びればいいのに」
「は、何突然」
さんに傷をつけたから」
「…すぐに治るのに」

小さく息を吐く。
嬉しいのを隠すためだなんて、知られるわけにはいかないけれども。

さんの身体に傷つけたら、いくらさんでも許しませんから」
「いやいや、なにそれ」




「俺が付けたモノ以外は要らない」



頬が熱くなる。
数日前に付けられた"それ"を思い出して、だ。


「…若が付けたのは、いいの?」
「ああ、俺が付けたのならいいんですよ」









「だってあなたは"俺の"でしょう」





なんて言って、不敵に笑いやがったこいつ。
生意気すぎて年下とは思えない、だけど。

「俺の」なんて言われちゃ、勝てるはずないじゃないか。



「ひよひよ」
「なんですか、その呼び方」
「わかしー」
「だから、いい加減にしてください」

「大好きだー」
「…!!」


あ、真っ赤になった。
滅多に見ることが出来ない貴重な顔だ。
これ、記念に写メ撮っておこうか。


「…本当に馬鹿だな」
「何よー」
「俺だって好きですよ。当たり前じゃないですか」


「…若かわいいなー」
「喧嘩売ってます?」







これも僕らの
     愛の形