「のう、
「どうしたの、仁王くん」
「好きじゃ」
「………罰ゲーム?」






   私の彼は詐欺師様!






ぽかんとした顔で椅子に座ったままのあたしを見下ろす彼、仁王雅治。(ちなみにこの表情、すごくレアだと思う)
その隣で、あたしの幼なじみであるブンちゃん…丸井ブン太が吹き出した。


「だから言ったろぃ?コイツははっきり言ってもわかんねーって」
「うっさいなブンちゃん!何のことだかさっぱり分からないもん!」
そう言えば、いよいよブンちゃんは可笑しそうに笑う。

「仁王くんも大変だね、ブンちゃんのゲームに付き合わされて」
「…確かに手強い相手じゃの」
「でも珍しい、仁王くんが負けるなんて」
「…まぁ勝負はここからだろぃ」



…なんだろう、会話がかみ合ってないのは気のせいかな?



、これが罰ゲームだって本当に思ってんのかよぃ?」
「だってそうじゃなきゃ仁王くんが突然こんなこと言い出すはずないもの」




立海テニス部、通称「コート上の詐欺師」。
眩しい銀髪と、整いすぎた容姿。
ファンクラブは最早公式、なんて噂もある。
そんな、目立つ要素満載の仁王くんが「好き」なんて…冗談きついよ。


「…仁王のせいだから俺知らね」
「今逃げたら報酬ナシじゃよ」


こそこそと話す二人。
一体何を話しているんだろうと首を傾げつつ、あたしは読みかけの本を開く。


「いっそのこと、…」
「…それしかないぜよ」
「んじゃ、俺は外で待ってるぜ」


話が終わったのか、二人がこちらに向き直る。
でも…ちょっと待って、今いい所なんだ。




「んー…もうちょっと…」
、顔上げんしゃい」
「やー、あと半分…」
、」
「だから待っ」







ちゅ







「てぇぇぇぇ!?」

額に落ちた柔らかい感触。
驚いて顔を上げれば、目の前に仁王くんの顔があった。

「に、仁王くんッ!ななな何、今の!?」

いたずらっ子のように笑った仁王くんは、あたしの机の上に置き去りにされた本をパタリと閉じる。

「ちょ…枝折り挟んでないのに、」
「こんでも…信じてくれんのか…?」



強い視線。
だけど、含んだ色は暖かさを帯びている。


「ほんとなの?」
「ん」
「嘘でしょ、」


嘘だって言って。いや、言わないで。

そんな矛盾した想いは、彼の言葉で消え失せた。

「おまえさんに嘘は言わん」

ニッ、と笑う仁王くん。
あたしはと言うと、今さら真っ赤になっていたりする。


「な、に」
「好きじゃ」



数分前、同じ人の唇から紡がれた言葉。
さっきと違うのは、
その意味をあたしがきちんと理解しているということで…


「あたしも、」
仁王くんが、好きです。





残念ながら一世一代の告白は最後まで言わせてもらえず、仁王くんの唇に吸い込まれてしまったけれど…
直後に耳元で囁かれた言葉に、あたしの心はすっかり惑わされてしまったみたい、です。






「訂正じゃ。
好きじゃのうて、愛してるぜよ…







私の彼は詐欺師様!
(オレの計画、天才的だろぃ?ってことで仁王、情報料のパフェ!)(情報料!?)(について一通り教えてもらったんじゃよ)(…個人情報流出ッ!!)