首元に付いた、紅い紅い印。
原因となった張本人は、あたしの前で息を切らせている。

「どう、責任とってくれるのよ…っ!」

「んなのしらねーよ!誘ったのはお前じゃんか!」

「うるさいっ!あんたがあたしを止めてくれてたら…!」



「そこまでにしなよ、君たち」



終わりそうにない口論を、精市くんの冷静な声が遮った。









   Run!Run!Run!









「だって、精市くん…!」
「あぁ、違うよ。口論はいくらでもやってて構わないんだけどさ。面白いから」

面白いから、で止めないのか…やっぱ精市くんはすごいわ。

「じゃあ何なんだよ」
「うん。そろそろちゃんとした説明してあげないと、


真田たちの思考回路が停止するのと、
画面の前の乙女たちがブラウザの"戻る"ボタンをクリックしちゃうんじゃないかと思ってね」


「「…はぁ?」」
一瞬の間の後。
あたしたちは口論してたのを忘れ、ぽかーんと精市くんを見つめた。











***











「だからね、全てはブン太のせいなのよ」
「始めるとこそこかよ。しかもオレのせいじゃねーだろい」
「これがブン太のせいじゃなきゃ誰のせいなのよ」
「だから誘ったのはお前だろって!」
「デブン太はちょっと黙ってろ。…それで、続きは?」


…最近体重を気にし始めてるブン太には最高の言葉だわ、うん。精市くんさすが。


「…昨日、花火大会あったじゃない」
それにブン太と二人で行ったの、と説明を続ける。
「で、やっぱり大きい花火大会だから、めっちゃくちゃ混んでたわけですよ」
「んで、もっと見えるところに行こうってコイツが言い出したんだよ」

「「それで、」」
「ブン太がそれを止めなかったから」「が勝手に草むらに飛び込んでったから」
「「(あたしが/コイツが)虫に刺された(のよ/んだよ)」」



「「「…はぁ?」」」


え…どうしたんだろうみんな。そんな「馬鹿らしい」って言いたそうな顔。
「言いたそうじゃなくて、言いたいんだよ。なにその馬鹿らしい理由。もっと面白い感じかと思ったのに」

ばっさりと切り捨てる精市くん。

「えええええ、面白い面白くないじゃなくてね!」
「つーか馬鹿らしいって!馬鹿はだけだろい?」
「はぁ?なによ、馬鹿はブン太でしょ?」


喧嘩再発。
騒ぎ始めたあたしたちを、
「つまりは、じゃの」
呆れ顔のにおくんが遮る。(そういえば、におくんはこの騒動巻き込まれるの二回目だっけ…)

「幸村は、お前さんたちが中学生にあるまじき行為をしたんじゃないかとわくわくしとったってこと」
「嫌だなぁ、そんなこと思ってないよ。

丸井がちゃんを襲ったんじゃないかとは思ったけどね」



…一瞬の、沈黙。

「えー、精市くんそんなこと考えてたの?」
「誰がなんか襲うかよ、まな板のくせして!」


「たたたたた、たるんどる!中学生というものは清く正しく、」
「真田ふくぶちょー、それいつの時代っスか?」


「うっさいなデブン太!変態!まな板とか言うな!」
「は!?この場合変態は俺じゃなく幸村くんだろい」
「あー、うん…まさか精市くんの脳内がそんなピンク色の妄想で出来てるとは、ね…」
「結論として、幸村くんはムッツリ属性ってことでいいのか?」
「いやいや、オープンでしょ!はっきりと言ったよ!」




「何か言ったかい、丸井……?」





…やばい。
なにか黒いオーラを纏った魔王様が降臨した。


「…ブン太、」「、」
「…ちょっと休戦しない?」
「…同じこと言おうとしてたぜぃ」
「となればあとは、」
「おう、」





Run! Run! Run! (逃走あるのみ!)