時計の針が、真夜中を指した。

「私、そろそろ寝るね」

そう言うと、彼は何も言わず私のベッドに入って来る。

「…ここで寝るの?」

笑顔で頷かれた。

「仕方ないなぁ…今日だけだよ?


…雅治」





   03:仁王雅治と私





パチリ、電気を消すと
「…何事?」
暗闇でもわかる眩い銀色が、私の視界を遮った。

「どうしたの雅治、暑くない?」
「暑くなか」


…珍しいこともあるものだ。彼が抱きついてくるなんて。



抱き寄せられるままに、ベッドに横になる。
何かあったでしょ、と問いかけようとして、やめた。

…雅治はきっと、何も答えない。はっきりと助けを求めようとはしないから。
だから私は小さく笑って、雅治の背中に腕を回す。




「…お前さんは、ちょうどええの」
「何が?」
「くっついても暑くないんじゃ。涼しくて、ちょうどええ」


体温の話ではないことは、何となくだけれどわかった。


ぎゅ、と私を抱きしめる力が強くなる。
「だから、がええ」


(…震えてる、)
微かに…本当に微かに、雅治は震えていた。
何かに怯えているように、私に縋って小さくなっている彼。
いつもからは想像もできない姿だ。



「雅治、」
「…なんじゃ」
「寒い時は、暖めてあげるよ。いつもは涼しくても、ね」

暑いのは苦手でも、暖かいのは好きでしょう?

そう耳元で囁いたら、やっと雅治は笑って「やっぱりお前さんがええ、」と呟いた。










(君が優しい夢を見られるように)(さあ、子守唄を歌おう)