「ん…取れないぃ…」
こんにゃろ、あたしに取られたくないってのか!




   01:掠めた指先




只今あたしは図書館にいます。

何故って、図書委員だから。

…何で人もほとんど来ない図書館に図書委員が必要なんだよ、なんてぼやきつつ、真面目に来てしまったんだけど…


「…暇」


もう一人の図書委員の子は逃げたし。

本気で人来ないし!!

…仕方ない、本でも読もうかな…

で、面白そうな本を見つけた、のはいいんですが。


「どーして上にあるのー!?」


そして冒頭に戻る。

…こうなったら諦めたくない!

「うー…もーちょい…よし、」



取れた、と思うのと、ヤバい、と思うのとはほぼ同時。

お目当ての本と共に万有引力の法則に従って数冊が落下してきて。

あたしはその衝撃に耐えようと目を閉じる。






沈黙。



「あ、れ?」

恐る恐る目を開ければ、視界は真っ暗。

それが制服だと気付くのに、少し時間がかかった。

「え、ちょ、」

「何をしているんだ、何を」

危ないだろう、と怒る声に視線を上げれば、そこにいたのは


「わ!クラピカくん!」


クラスメートのクラピカくん、だった。

「まったく、無理をしないで椅子を使うなりすればいいだろう…」

見れば、あたしの十数センチ上空で受け止められている本たち。

「う…だって、取れると思って…」

膨れるあたしにクラピカくんは苦笑して、本を手渡してくれた。



一瞬触れた指先に、頬が熱くなる。



「ク、クラピカくん!!」

「なんだ」

「えっと、その…


ひ、暇だし、お喋りしない?」






そうきっと、これが恋の始まり




掠めた指先