ひらひら、ちらちら。
ゆっくりと舞い落ちて消える雪は、
何の為に降り続けるんだろうか?




     星空に降る雪




初めて雪を見た日はもう覚えてないけれど、毎年この雪を見ると…小さな憧れを抱く。
「どうしたんですか?」
じっと外を見つめる私に気付いたようで、後ろから骸が声をかけてきた。
六道骸―――
冷酷そうに見えて実は優しい彼は、私が返事を返さないのを疑問に思ったのか静かにソファから立ち上がる。

「珍しいですね、貴方がそんな顔をするなんて」
「…別に、何でも」
すると彼は楽しそうに"クフフ"と笑う。
「いつも"別に"ばかりではわかりませんよ?何が言いたいのか」
「骸はいつもそう言うよね」
「それは貴方がそれしか言わないからです」

骸はいつも私を"貴方"と呼ぶ。
なぜそう呼ぶのか、と一度聞いたけれども、確か上手く流された気がする。


「…雪、ってさ。何なんだろうね」
「そうですね…」
私の問いに、彼は深く考え込んで。


「水蒸気が空中で昇華し「それ以上言ったら殺すよ?」
武器を構えて見せれば、骸は苦笑して口を閉じ。
「冗談ですよ。相変わらずですね貴方は」
「その言葉、そのまま骸に返してあげるよ」
言った後、骸に移していた視線を再び外に戻す。
今度は彼も何も言わず、隣に並んで同じように外を見つめ。
長い間、無言で降り続ける雪を眺めていた。


次第に雪の空は暗くなり…星が輝き始めても、彼は外を見つめるのを止めない。


「…何見てるの?」
「同じ物を見ていれば、貴方が何を考えているのか分かると思いまして」
分からなくてもいいのに、と思いながらも、やっぱり私の心は外へと向かう。


「雪みたいに…消えてしまえたらいいのにな」


小さく零してしまった呟きに、骸は驚いたような視線を私へ移す。
「…突然どうしたんですか」



…本当は、雪を見るたびに思っていたんだ。
雪の様に淡く消えてしまいたい、って。



言葉にならない思いを、伝える術は無い。
何も答えない私を見た彼は、困ったような笑みを浮かべて。
「今ほど、貴方が何を言いたいのか知りたかったことはありませんよ」
「…」
私だって、自分が何を言いたいのか分からない。


「まったく…貴方はいつもそうですね」
「は…?」
「一人で溜め込みすぎなんですよ。いい加減にしてください」

怒ったのだろうか。あの骸が。一瞬、そう思った。

驚いて骸を見つめる私に、彼は少し表情を和らげて続ける。

「僕だって、心配しているんですから」

もっと僕を頼ってください。そう言って彼は微笑む。
「骸…


ありがとう」



と、その時。

「骸さーん、腹減ったんれすけどー!」
「犬、やめなよ…っ!?」
突然侵入してきた二人を、強烈なブラックオーラが襲う。
「犬…千種…何で入ってきたんですか?」
「犬が"ナッポーはどこらー"と言い出したので」
答える千種くんは内心冷や汗だらだらみたいで、珍しくキョロキョロと落ち着かない様子。
「柿ピー!!む、骸さん!誤解れす!!」
「クフフ…いけませんね犬…

ちょっといい雰囲気だったんですよ?今から二人で愛をはぐく「…何しようとしてたの?」


骸より更に恐ろしいブラックオーラ到来。
出元はもちろん私だったりする。


「…やっぱりさっき殺しといた方が良かったかなぁ?」
「いや!お、落ち着いてください!!誤解ですよ!!」
「何が誤解だって?犬ちゃんの方が可愛いもんだよ!!」
どもる骸にはお構いなしで、私は再び武器を構える。
「…一撃必殺!!」





君がいるなら何も恐くないよ?
闇の中でも何処へでも付いて行くから。



(Please take me faraway...)