振り向いた少女の頬から、静かに涙が零れ落ちた。




     The moon illuminates




「総悟…」
小さく自分を呼ぶその声に、彼はふっと笑みを零して手を伸ばし、彼女の頭をなで。
「どうしたんでィ」


優しい声に、瞳から零れる珠は更に数を増し…その様子は彼を慌てさせる。


?」
「ねぇ、総悟…外は…」
「外?外がどうかしたのかィ?」
「外では…何が起こっているの?どうして、私は…外に出られないの…?」
彼女の問いは、少年…いや、もう青年と呼ぶにふさわしい…を驚かせた。
物心ついた頃からずっと一緒にいたからこそ、少女は彼に聞いたのだ。


「私…総悟と一緒に行きたいよ…」


裕福な家へ"養子"として売られた。 幼い頃とは違い、"お嬢様"である今の彼女にそれは許されることではない。
それを知りつつ、彼女はなおそれを願う。



「…おいで」


沖田の言葉に少女は手を伸ばし、同じように伸ばされた彼の手を掴む。
「よっと」
「ちょ…総悟?」
小さな身体を腕の中に収め、彼は小さく囁く。


「本当に…来たいかィ?」


迷わず頷く少女の頬に沖田は軽く口付けを落とし、そのままその身体を抱き上げる。
「や、総悟!!お、ろして」
「それ以上騒ぐとここで襲うぜィ」
ニヤリ。彼女の染まった頬を見て、青年は妖しく笑う。
「覚悟は…出来てるよな?」



彼女は涙を流す。


それは、悲しみの涙ではない。


溢れるそれは、





決別の、涙。



(さぁ、君に自由の翼をあげよう。)